外腸骨動脈の閉塞①(症状への気づき)

「外腸骨動脈の閉塞」
聞き慣れない症状です。


今日はこれから店主が手術によって解決しようとしている症状と、同じ症状に悩まれているサイクリストへ何かヒントを示すことができればと思い、そのことについてお話します。
長くなりそうなので何回かに分けて投稿します。

 

  




何年も前、少なくとも明白に症状を自覚したのは6年程前から。
左脚の疲労の感じ方や出力の左右差が明きらかに。

この症状が軽度または進行段階にあるうちは症状は特に運動強度を上げたときに顕著に現れるのみで、日常生活はもちろん低強度で走っている限りでは特に支障を感じません。

しかし、ある一定の強度、出力に達するとたちまち左脚の筋肉は極端な疲労を呈し、まるで脚が窒息したかのような状況に陥ります。”窒息”と表現したのは今原因がわかっているからこそできる表現ですが、その時はとにかくよくわからない疲労、つまり左脚が弱いとか、あるいは精神的な問題なのだと考えていました。


■5,6年前から知覚していた症状
・ある強度を超えて踏むとたちまち左脚が動かなくなる。
・TTなどギリギリの領域で踏み続けていると時間の経過とともに左脚の感覚を失う。後半は右足だけで踏んでいる感覚
・安静時も左鼠径部にモヤモヤする感覚が時折来る。(モヤモヤする部位をストレッチするかどして刺激したくなる)
・たまに左脚だけ痺れる





脚力の左右差は数値にも表れます。



↑は2017年のフランス アルビで開催されたUCIグランフォンド世界選でのITT。
パイオニアのペダリングモニターセンサーは左右の脚のパワーをそれぞれ独立して計測することができます。この36:64というのはこのITTでのパワーの左右比です。



この時は30分強のタイムだったかと記憶していますが、左右差は顕著。左脚は右脚の半分くらいの出力しか出せていないのですね。


最も酷かったときはワークアウトのグロスで28:72なんてことも・・・・・・




左脚の踏めない問題はかなり悩まされていたもので、左脚が弱いのを前提とした上で不調の原因は筋肉の問題、あるいはヘルニアによる症状など整形外科の領域の問題かと見ていました。

不思議なのは中強度までの出力域では支障を感じにくいこと。
例えば私の場合250W程度までの出力であれば数時間維持することはできますが、300Wを超えると左右差が大きく出始めて、330Wくらいまで出力を上げるとたちまち左脚は酸欠状態に陥ります。
酸欠と表現したこの状況は例えるなら、激しいインターバルトレーニングを何回もやった後の最後の1本目の脚の状態とか、10分全開でもがいた後の30秒後の状態が近いです。
とはいえ左脚が疲れ果てた感覚でも右脚は元気なので全く走れなくなることはありません。この状況では大きな左右差が数字では確認できます。



左右差を改善するために左足のクリート位置を調整してみたり、クリートスペーサーを挟んでみたり他にもハードウェアを今までと違うものに変えてみるアプローチもとってみましたが状況は変わらず。

あれこれ他にも様々な手段を講じてみましたが、そうこうしているうちにその状況に身体は何となく馴染んできます。何も良くはなっていないのですが、そんなものだと言い聞かせているようなものです。

しばらくはそれで気は紛れていましたし、ALDINAを開業してからというもの真剣にレース活動に取り組むこともなかなかままならなくて症状を直視する機会も減っていました。


しかしこの夏から少しずつまた乗れるようになってきて、それにともなって左脚の違和感も日に日に気持ち悪く感じるようになってきました。


そんな時に東京オリンピック女子ロード日本代表の與那嶺恵理選手が「外腸骨動脈の線維化症」を公表されました。
聞いたことも無い症状でしたが、彼女のブログの記事やその症状にまつわる海外の記事を読んでみるとまるで自分の症状を代弁しているかのようにピッタリ符合するものでした。
それは私にとって衝撃的な発見のように思えました。



「外腸骨動脈」と「サイクリスト」を結ぶ症状に関してこれはインターネットで調べても日本ではほぼ情報はありません。もちろん周りにもその症状に罹っている人はいません。
唯一見つけた情報が元那須ブラーゼンの小野寺慶選手が同じ「外腸骨動脈の線維化症」についてご自身のブログにて詳細に書かれていました。
これは後に自分の症状の原因を確信する契機となった記事で、著者の小野寺選手には本当に感謝しています。


■外腸骨動脈の線維化症とは
医療の専門家ではないので詳しいことは言えませんが、私の理解では

大動脈から送られてきた血液を両脚へ送るための動脈が外腸骨動脈で、私の場合は左脚のこの外腸骨動脈の内腔が何らかの要因によって細くなってしまっている症状で、そのことによって血流が阻害されているのではないかと思われました。

■検査
小野寺選手の記事によると、左右の脚の血圧を測ることで検査します。
なるほど、血圧に左右差が認められれば少なくとも血流に何らかの問題があると見ることができます。

 

早速測ってみます。

血圧計は普通の家庭用の上腕計測の血圧計を足首に巻いて使用しました。

 
安静状態での血圧。写真左が左脚、右が右脚です。
ほとんど左右同じです。(ちなみに足首でとった血圧値は上腕でとるものと比べると心臓から遠い位置にあるため高めにでます)
 

 


そのあとローラーを回して再度血圧を測ってみます。ローラーはノーアップで5分300Wで踏んでみました。


するとどうでしょう、当然血圧は上がるはずなのですが、気持ち悪いことに左足は運動直後にも関わらず最高血圧が下がっているのです。

ここから想像できたことはやはり左脚の血流に何かしらの問題が生じているということです。




これが9月17日のことでした。



しかし、9月はちょうどレースがこの後3つ控えていました。

それまでも走ることはできていたわけですから、あまり深いことは考えずにその週末にはJBCF魚沼、その翌週はJBCF群馬2戦に。

写真 (C)gg_kasai


群馬1日目はところどころ左足の感覚不良は感じることがありましたが、強度的にはまだ処理できる範囲。右脚は元気だったので勝つことはできませんでしたが2位には何とか入れました。
 
 


しかし、


2日目はまったく左脚が動かず。それは1周目からその状況で右脚だけで漕いでいるような感覚で走っていましたが、ハッタリは通じず4周目だっただろうか、勝負集団からドロップ。全く脚の感覚は戻らずそのまま最終完走者に・・・・・・

前日のレースよりもペースは遅く、難しいことは何もないように思えたレースでしたが脚が言うこと聞いてくれない。
恐ろしく情けない走りでしたが、どうにもならなかった。抗いようのない明らかな左脚の異常。


また改めて左脚と真剣に向き合う必要性を感じるのでした。





つづく。